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福岡の新築アパート投資とハザードマップ|水害リスクが融資・保険料・入居付けに与える影響

福岡の新築アパート投資とハザードマップ|水害リスクが融資・保険料・入居付けに与える影響

福岡で土地から新築アパートを建てるとき、多くの方が見落とす確認事項があります。ハザードマップです。

利回り、融資、エリアの人口。これらは熱心に調べます。しかし「この土地は水に浸かるのか」を最初に確認する方は、決して多くありません。

結論からお伝えします。浸水想定区域だから投資してはいけない、という話ではありません。問題は、知らずに買うことです。

水害リスクを把握しないまま土地を取得すると、3つの方向から収支が削られます。銀行融資、火災保険料、そして入居付けです。しかも近年の制度改正で、この3つはいずれも以前より厳しくなっています。

この記事では、福岡県内の実際の水害を振り返りながら、投資家として何をどう確認すべきかを整理します。

目次

福岡は「水害が起きない土地」ではありません

まず、事実を押さえます。福岡県は過去に繰り返し水害に見舞われてきました。

県内で起きた主な水害

発生年 災害 主な被災地
1999年6月 都市型水害。御笠川などが氾濫 福岡市博多区
2003年7月 御笠川が再び氾濫 福岡市博多区・太宰府市
2017年7月 平成29年7月九州北部豪雨 朝倉市・東峰村
2020年7月 令和2年7月豪雨 大牟田市ほか
2023年7月 九州北部豪雨 久留米市・うきは市・東峰村

この表を見て、意外に思われた方もいるはずです。上の2件は、福岡市博多区で起きています。

博多駅前が水没した1999年

1999年6月29日、福岡市で記録的な集中豪雨が発生しました。9時までの1時間に77ミリ、3時間で126ミリという雨量でした。

御笠川と、これに合流する山王放水路が氾濫しました。博多区を中心に約3,000棟の家屋や事務所が浸水しています。地下街や地下鉄、ビルの地下室に水が流れ込み、地下室に閉じ込められた方が亡くなりました。

さらに2003年7月19日、同じ御笠川で再び氾濫が起きます。上流の太宰府市で最大時間雨量99ミリを記録したことが引き金でした。博多駅周辺は、4年のうちに2度浸水したことになります。

ここが重要な点です。福岡県で最も地価の高いエリアの一つが、過去に2度浸水しています。

「郊外の川沿いだけが危ない」という感覚は、福岡では通用しません。

近年は県南・県東でも被害が続いています

2017年7月の九州北部豪雨では、朝倉市と東峰村で甚大な被害が出ました。2020年7月の豪雨では大牟田市が浸水し、市は「令和2年7月豪雨浸水マップ」を公開しています。2023年7月には久留米市、うきは市、東峰村で被害が発生しました。

これらのエリアは、土地値が抑えられるため投資候補に挙がりやすい地域でもあります。だからこそ、確認が欠かせません。

なお、各災害の詳細な被害状況については、各自治体および気象庁の公式サイトをご確認ください。

ハザードマップは1種類ではありません

ここで基礎知識を整理します。「ハザードマップ」と一括りにされがちですが、水害に関するものだけで複数の種類があります。

  • 洪水ハザードマップ……河川が氾濫した場合の浸水想定を示す
  • 内水ハザードマップ……排水路などで雨水を排水しきれず浸水する場合の想定を示す
  • 高潮ハザードマップ……台風などで海面が上昇した場合の浸水想定を示す
  • 土砂災害ハザードマップ……がけ崩れや土石流の警戒区域を示す

投資家が最も見落とすのが、2つ目の内水です。

内水氾濫とは、大雨で下水道や排水路の処理能力を超え、雨水が道路や宅地に溢れる現象です。河川から離れた場所でも起こります。

1999年の博多駅前の被害は、まさに都市型の水害でした。市街地は地面がアスファルトに覆われ、雨水が地中に浸み込みません。短時間の激しい雨が、そのまま低い場所へ流れ込みます。

「近くに大きな川がないから安心」という判断は、根拠になりません。洪水と内水は、必ず両方を確認してください。

制度改正1:水害ハザードマップの説明が義務になりました

ここからが、投資家として押さえるべき本題です。

2020年8月28日、宅地建物取引業法の施行規則が改正されました。これにより、不動産取引の重要事項説明において、水害ハザードマップ上での対象物件の所在地を説明することが義務化されました。

対象は洪水・内水・高潮のハザードマップです。土砂災害や津波のリスクは、以前から重要事項説明の対象とされていました。

この改正が投資家にとって何を意味するか。答えは出口です。

あなたがその土地を売却するとき、買主には必ず水害リスクが説明されます。あなたが買うときに気づかなかったとしても、売るときには相手に伝わります。

つまり、水害リスクは将来の売却価格に織り込まれる要素になったということです。10年後、15年後の出口を考えるなら、取得時点で確認しておくべき項目です。

出口の考え方については、新築アパートの出口戦略で詳しく整理しています。

制度の詳細は、国土交通省および各不動産団体の公式情報をご確認ください。

制度改正2:火災保険の水災料率が地域別になりました

もう一つ、収支に直接効く変更があります。

2024年10月から、火災保険の水災料率が市区町村別に5区分へ細分化されました。損害保険料率算出機構が参考純率を改定したことによるものです。

それまで、水災に関する保険料率は全国一律でした。改定後は、水災リスクの低い1等地から、リスクの高い5等地まで5段階に分かれます。

これはアパート経営のランニングコストに直結します。

新築アパートの収支計画では、火災保険料を年間経費として計上します。同じ建物・同じ補償内容でも、土地の所在地によって保険料が変わるようになったのです。

なお、この改定にあわせて火災保険料そのものも引き上げられています。参考純率は全国平均で過去最大の上げ幅になったとされています。

保険料の試算は、土地を決める前に行ってください。「建物ができてから保険を選ぶ」では順序が逆です。等地区分や実際の保険料は、保険会社・商品によって異なります。最新情報は各保険会社の公式サイトおよび代理店にご確認ください。

制度だけではありません。融資と入居付けにも効きます

銀行の担保評価

金融機関は、土地を担保として評価します。浸水想定区域に該当する土地は、評価上の扱いが慎重になる場合があります。

浸水深が深い区域では、融資額や条件に影響が出る可能性も考えられます。事業計画を持ち込む前に、自分で把握しておくべき情報です。

銀行がどこを見るかについては、銀行評価目線で動き出す新築アパート一棟投資の考え方でも解説しています。

入居付けへの影響

近年、入居希望者もハザードマップを見ます。スマートフォンで住所を入力すれば、誰でも数十秒で確認できるからです。

実際に浸水を経験した地域では、この傾向がより強く出ます。特に1階住戸は、募集時に不利になる場合があります。

満室経営の考え方は、福岡不動産投資の入居付け完全攻略をあわせてご覧ください。

実務:土地を見る前にやる3ステップ

では、具体的に何をすればよいのか。順番にお伝えします。

ステップ1:重ねるハザードマップで全体像をつかむ

国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」の重ねるハザードマップを使います。洪水・内水・高潮・土砂災害の情報を、1つの地図上に重ねて確認できます。

複数の市町村にまたがって閲覧できる点が便利です。候補地を広く比較する段階では、まずここから始めます。

ステップ2:市町村の個別ハザードマップで詳細を見る

次に、その土地がある自治体の公式ハザードマップを確認します。ここで内水ハザードマップを必ず見てください。

自治体によっては、洪水と内水を別冊で公開しています。片方だけ見て安心してしまうケースが実際にあります。

ステップ3:現地で高低差を確認する

地図で終わらせず、必ず現地に立ってください。確認するのは以下です。

  • 前面道路と敷地の高低差
  • 周辺の土地と比べて低くなっていないか
  • 近くの水路・側溝の位置と大きさ
  • 雨水がどちらへ流れる地形か

あわせて、その土地の古い地名も調べる価値があります。「沼」「窪」「川」「江」などの文字が入る地名は、かつての地形を示している場合があります。重ねるハザードマップでは、自然災害伝承碑の位置も確認できます。

浸水想定区域でも成立させる設計の考え方

冒頭でお伝えしたとおり、浸水想定区域が即座に投資不可を意味するわけではありません。設計で対応できる余地があります。

土地から新築で建てる場合、この点が中古物件の取得と決定的に違います。建物をこれから設計できるからです。

検討できる工夫には、次のようなものがあります。

  • 盛土でGL(地盤面の高さ)を上げる……最も基本的な対応です
  • 1階を駐車場や設備スペースにする……居住部分を2階以上に配置します
  • 電気設備の位置を上げる……分電盤・給湯器・受変電設備を浸水想定より高い位置に設ける
  • エレベーターや機械式設備の配置を工夫する……浸水時の復旧コストを抑えます

特に3つ目は見落とされがちです。建物本体が無事でも、電気設備が水没すれば長期間使えません。復旧費用と、その間の家賃損失が発生します。

ただし、これらの対応にはコストがかかります。盛土の量が増えれば造成費が膨らみます。対策コストを織り込んだうえで収支が成立するかどうか。この判断こそが、土地から新築アパートを建てる際の腕の見せどころです。

やってはいけない2つの判断

最後に、避けるべき判断を2つお伝えします。

1つ目は、ハザードマップだけを見て即座に候補から外すことです。

浸水想定は、想定した規模の降雨に基づく計算結果です。浸水深が数十センチの区域と、数メートルの区域では、対応の難易度がまったく違います。深さと、対策コストをセットで見てください。

2つ目は、土地値の安さだけで飛びつくことです。

浸水想定区域の土地は、周辺相場より安く出ることがあります。安いのには理由があります。造成費、保険料、将来の売却価格。これらをすべて計算に入れて、なお成立するかを確認してください。

「安いから買う」ではなく「対策後の収支が合うから買う」。この順序を守ることが大切です。

福岡県内のエリア別に見るポイント

参考として、県内エリアごとの着眼点を整理します。

エリア 主に確認すべきリスク
福岡市中心部・博多区周辺 内水氾濫。都市型水害の履歴あり
筑後川流域(久留米市・うきは市など) 洪水と内水の両方
有明海沿岸(大牟田市・柳川市など) 内水氾濫と高潮
遠賀川流域(直方市・飯塚市など) 河川の洪水
山間部・傾斜地(朝倉市・東峰村など) 土砂災害

同じ福岡県でも、警戒すべきリスクの種類が異なります。エリアごとの土地選定の考え方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

福岡での土地選びとハザードマップについて、要点を整理します。

  • 福岡県は水害の履歴が多く、博多駅周辺も過去に2度浸水している
  • 洪水・内水・高潮・土砂災害はそれぞれ別のマップ。特に内水の確認が漏れやすい
  • 2020年8月から、水害ハザードマップの説明が重要事項説明で義務化された
  • 2024年10月から、火災保険の水災料率が市区町村別5区分に細分化された
  • 水害リスクは、融資・保険料・入居付け・売却価格の4方向に影響し得る
  • 浸水想定区域でも、設計次第で成立する場合がある。ただし対策コストを収支に織り込むこと

土地から新築アパートを建てる最大の利点は、建物をこれから設計できることです。既存の建物を買う場合、水害への対応は限られます。

だからこそ、土地の段階でリスクを正確に把握することに意味があります。避けるべき土地なのか、対策して活かせる土地なのか。この見極めが、10年後、20年後の収支を左右します。

なお、本記事に記載した制度や統計は執筆時点の情報に基づいています。制度は改正されることがあります。最新情報は国土交通省、各自治体、各保険会社の公式サイトをご確認ください。

また、本記事は特定の利回りや収益を保証するものではありません。実際の投資判断は、個別の土地・建築計画・資金計画をもとに慎重にご検討ください。


監修者

髙木 政利(セイコー・エステート&ディベロップメント株式会社 代表)

福岡を中心に、土地から新築アパートの不動産投資を支援しています。30年一括借上げの老人ホーム投資など、土地活用の選択肢も含めてご提案しています。

土地の仕入れから設計・建築までを一貫して手がけているため、造成計画や設備配置を含めた水害対策のご相談にも対応しています。

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