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新築アパートの修繕費はいくらかかる?10年目から始まる支出と長期修繕計画の立て方

新築アパートの修繕費はいくらかかる?10年目から始まる支出と長期修繕計画の立て方

新築アパートの収支計画を見せていただくと、ある共通点に気づきます。修繕費の欄が空白か、ごく小さい金額になっていることです。

理由は分かります。新築だからです。建てたばかりの建物に、修繕は必要ありません。

しかし、それは最初の数年だけの話です。

結論からお伝えします。新築アパートの修繕費は、10年目から本格的に始まります。そして、その支出は収支計画に織り込まれていないことが多いのです。

国土交通省の調査によれば、個人オーナーのうち87.9%が「長期修繕計画を作成していない」と回答しています。9割近くが、将来の支出を計画せずに賃貸経営を行っている計算になります。

この記事では、新築アパートの修繕費を4つの視点から整理します。修繕周期、30年間の総額、積立の目安、そして直近の制度改正です。

目次

「新築だから修繕は不要」が崩れる時期

まず、何がいつ必要になるのかを確認します。

木造アパートの主な修繕周期は、おおむね次のとおりです。

部位・設備 修繕周期の目安
外壁塗装 10〜15年
屋根の塗装・葺き替え 10〜15年
防水工事(バルコニー・陸屋根) 10〜15年
給湯器 10〜15年
鉄部(階段・手すり)の塗装 5〜10年
シロアリ防除 5年程度
給排水管 20〜30年

※建物の仕様、立地環境、使用状況によって大きく変わります。

この表を見ると、築10年前後に複数の項目が同時に来ることが分かります。

外壁、屋根、防水、給湯器。これらが重なると、支出は一度に膨らみます。だからこそ「最初の大規模修繕は築10年前後」と言われるのです。

シロアリ対策は福岡では特に重要です

表の中で、見落とされやすいのがシロアリ防除です。

九州は温暖で湿度が高く、シロアリの活動に適した環境です。木造アパートを福岡で運営するなら、5年程度の周期での点検・防除は前提として考えるべき項目です。

新築時の防蟻処理には保証期間があります。期間が切れたあと、何もしないまま10年が過ぎるケースが実際にあります。

沿岸部では塩害も考慮してください

福岡県内でも、立地によって劣化の速さは変わります。

玄界灘に面した糸島市や宗像市の沿岸部、有明海に面した大牟田市や柳川市の沿岸部では、塩害の影響を受ける可能性があります。潮風は金属部分の腐食を早めます。階段や手すりなどの鉄部は、内陸部より短い周期での塗装が必要になる場合があります。

台風の常襲地帯である点も見逃せません。屋根材や雨樋、外構は、風の影響を受けやすい部分です。水害リスクとあわせて、福岡の新築アパート投資とハザードマップもご確認ください。

同じ福岡県内でも、沿岸部と内陸部では修繕周期が変わり得るということです。土地を選ぶ段階から、この点を織り込んでおいてください。

30年でいくらかかるのか

次に、総額の感覚を持っておきます。

一般的な目安として、1戸あたり30年間で約174万円という数字が挙げられます。10戸のアパートであれば、30年間で約1,740万円という計算になります。

大きな金額に感じられるかもしれません。しかし、30年で割れば年間約58万円です。月あたり約4万8,000円になります。

この金額を毎月積み立てていれば、大規模修繕の時期に慌てることはありません。逆に、積み立てていなければ、10年目に数百万円を突然用意することになります。

※上記は目安です。実際の金額は建物の規模・仕様・立地によって異なります。

築年数別に並べると、支出の波が見えます

総額だけでは実感が湧きにくいので、時系列で並べてみます。木造2階建て10戸のアパートを想定した概算例です。

時期 主な工事内容 概算費用
築5年 シロアリ防除、鉄部塗装、小修繕 約50万円
築10年 外壁塗装、屋根塗装、防水工事 約450万円
築15年 給湯器交換、鉄部塗装、シロアリ防除 約250万円
築20年 外壁・屋根・防水(2回目) 約500万円
築25年 設備更新、シロアリ防除、鉄部塗装 約200万円
築30年 給排水管、外壁の部分補修 約300万円
合計 約1,750万円

※建物の仕様・規模・立地・工事単価によって大きく変動します。考え方を示すための概算例です。

この表で注目していただきたいのは、支出が平坦ではないことです。

築10年と築20年に、大きな山が来ます。この2つの年に、それぞれ400万円から500万円程度が必要になります。

毎年均等に出ていく費用ではありません。だからこそ、積み立てが必要になるのです。

積立の目安は家賃収入の5〜10%です

では、どのくらい積み立てればよいのか。

一般的には、木造アパートで月額家賃収入の5〜10%程度を修繕積立に回すケースが多いとされています。鉄骨造では10〜15%程度が目安とされます。

たとえば月額家賃収入が60万円のアパートであれば、月3万円から6万円程度になります。

重要なのは、この金額を収支計画の段階で経費として見込んでおくことです。「手元に残るお金」から差し引いて考えてください。

修繕積立を差し引いた後の数字が、実質的なキャッシュフローです。ここを見誤ると、10年目に計画が崩れます。

10年目が危険な理由は、修繕だけではありません

築10年前後には、複数の負担が同時に訪れます。

1つ目は、大規模修繕です。ここまで述べたとおりです。

2つ目は、デッドクロスの接近です。減価償却費がローンの元金返済額を下回ると、帳簿上は黒字なのに手元にお金が残らない状態になります。詳しくは新築アパートの出口戦略で解説しています。

3つ目は、競合物件の登場です。築10年になれば、周辺には新築の物件が建っています。設備も間取りも新しい物件と比較されます。

4つ目は、初期入居者の入れ替わりです。長く住んでいた入居者が退去すれば、原状回復費用が発生します。

原状回復については、国土交通省がガイドラインを公表しています。どこまでが貸主の負担で、どこからが借主の負担か。この線引きを理解していないと、想定外の支出が生じます。

長く住んだ入居者ほど、経年劣化の割合が大きくなります。つまり貸主の負担割合が増えます。10年住んだ方の退去は、2年で退去した方より原状回復の負担が重くなる傾向があります。

この4つが重なるのが、築10年前後です。修繕費だけを見ていると、この時期の全体像を見誤ります。

満室経営を維持する考え方については、福岡不動産投資の入居付け完全攻略をあわせてご覧ください。

2025年の制度改正:修繕にも確認申請が必要になる場合があります

ここで、直近の重要な制度変更に触れます。

2025年4月、改正建築基準法が施行されました。いわゆる「4号特例」が縮小されています。

4号特例とは、一定規模以下の建築物について、建築確認における審査の一部を省略できる制度です。これまで、木造2階建ての多くはこの特例の対象でした。

改正により、従来の4号建築物の多くが「新2号建築物」として扱われます。その結果、増改築や大規模の修繕・大規模の模様替を行う際に、建築確認申請が必要になる場合があります。

投資家として押さえるべき点は2つです。

1つ目は、工期です。確認申請が必要になれば、その分の期間が加わります。空室期間が延びる可能性があります。

2つ目は、コストです。申請に伴う設計・構造関係の資料作成に費用が発生します。

すべての修繕工事が対象になるわけではありません。工事の内容と規模によって判断が分かれます。実際の適用については、設計者・施工会社および所管の建築主事にご確認ください。制度の詳細は国土交通省の公式サイトをご確認ください。

長期修繕計画は自分で作れます

「長期修繕計画」と聞くと、専門的で難しそうに感じるかもしれません。しかし、出発点は単純です。

いつ・どこを・いくらで直すかを一覧にするだけです。

国土交通省は、賃貸住宅の計画修繕に関するガイドブックを公開しています。あわせて、計画修繕セルフチェックシートも用意されています。これらは公式サイトから入手できます。

最初から完璧なものを作る必要はありません。次の3点から始めてください。

  1. 建物の主要部位と修繕周期を書き出す……上の表が出発点になります
  2. 概算費用を入れる……施工会社に見積もりの目安を聞いておきます
  3. 年ごとの積立額を決める……家賃収入の5〜10%から逆算します

作成した計画は、5年ごとに見直します。建物の状態も、工事単価も変わるためです。

なお、資材価格や人件費は変動します。10年後の工事費が、今日の見積もりどおりになるとは限りません。余裕を持った積立を心がけてください。

建物の性能が、将来の修繕費を左右します

ここが、土地から新築で建てる方に最もお伝えしたい部分です。

修繕費は、建てた後に決まるものではありません。設計と仕様の段階で、かなりの部分が決まっています。

たとえば、次のような要素が将来の修繕費に影響します。

  • 外壁材の種類……メンテナンス周期と単価が変わります
  • 屋根の形状と材質……足場の掛けやすさにも影響します
  • バルコニーの防水仕様……面積と工法で費用が変わります
  • 設備の標準化……型式を揃えておくと交換時の手配が容易です
  • 給湯器などの設置位置……交換作業のしやすさが工事費に影響します

初期の建築費を削ることは可能です。しかし、削った分は将来の修繕費として戻ってくることがあります。

建築費と修繕費は、合計で見るべきものです。

遮熱性能と建物の劣化

建物の性能は、室内環境だけでなく、建物自体の寿命にも関わります。

外壁や屋根は、紫外線と熱によって劣化します。夏場の表面温度が下がれば、劣化の進行を緩やかにできる可能性があります。

当社では、遮熱に関する実証も行っています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

修繕費と資本的支出の違いにご注意ください

最後に、税務上の論点を1つお伝えします。

工事にかかった費用は、すべてがその年の経費になるわけではありません。税務上、次の2つに分かれます。

  • 修繕費……原状回復にあたるもの。支出した年の経費になります
  • 資本的支出……建物の価値を高める、または耐用年数を延ばすもの。減価償却の対象になります

同じ外壁工事でも、内容によって扱いが変わる場合があります。経費として一度に落とせるかどうかで、その年の税負担は変わります。

判断は個別の工事内容によります。必ず税理士にご確認ください。最新の取り扱いは国税庁の公式サイトをご確認ください。

まとめ

新築アパートの修繕費について、要点を整理します。

  • 修繕費は10年目から本格的に始まる。新築でも支出はゼロではない
  • 外壁・屋根・防水・給湯器は、築10年前後に同時期に重なる
  • 福岡ではシロアリ防除も5年程度の周期で考える
  • 目安は1戸あたり30年で約174万円。10戸なら約1,740万円
  • 積立の目安は、木造で月額家賃収入の5〜10%程度
  • 築10年前後は、修繕・デッドクロス・競合の新築・入居者の入れ替わりが重なる
  • 2025年4月の建築基準法改正により、修繕工事でも確認申請が必要になる場合がある
  • 修繕費は設計と仕様の段階で、かなりの部分が決まっている

修繕費の話は、収支計画を良く見せるうえでは邪魔な要素です。だから語られないことがあります。

しかし、語られない支出は、なくなるわけではありません。10年目に必ず現れます。

土地から新築アパートを建てる方には、この点を最初にお伝えしています。30年の事業として見たとき、初期の建築費と将来の修繕費は切り離せないためです。

収支計画をご覧になるときは、修繕費の欄を確認してください。そこが空白なら、その計画はまだ完成していません。

なお、本記事に記載した周期・費用・制度は執筆時点の一般的な目安です。実際の金額は建物と地域によって異なります。制度は改正されることもあります。最新情報は国土交通省および各公式サイトをご確認ください。

また、本記事は特定の利回りや収益を保証するものではありません。実際の投資判断は、個別の土地・建築計画・資金計画をもとに慎重にご検討ください。


監修者

髙木 政利(セイコー・エステート&ディベロップメント株式会社 代表)

福岡を中心に、土地から新築アパートの不動産投資を支援しています。30年一括借上げの老人ホーム投資など、土地活用の選択肢も含めてご提案しています。

土地の仕入れから設計・建築まで一貫して手がけているため、将来の修繕費まで含めた事業計画のご相談にも対応しています。

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